STツムジです。
日々、利用者さんのお宅を訪問している言語聴覚士です。
言語聴覚士は「食べる」「話す」のリハビリテーションの専門家です。
インテックス大阪で開催されていたバリアフリー2018に行ってきました。
西日本では1年で一番大規模な総合福祉展です。
とろみ剤・嚥下食・服薬ゼリー・補聴器・人工喉頭・徘徊感知機器・視線スイッチ等のブースで話をうかがいました。
今回最も驚いたのが、介護用ベッドの進化!
各メーカーのベッドの機能を体験してきました。
私は福祉用具・介護用品の営業の仕事を経て、STになりました。
「ベッドで誤嚥が予防できる」
この発想は全くなかったです。
介護用ベッドの基本知識
基本知識をおさえておきましょう。
ベッドのモーター数は1~4つ。
モーター数によって、機能の幅が変わります。
1モーター:背・あし連動 または 高さ
2モーター:背・あし連動+高さ
3モーター:背上げ+あし上げ+高さ
背上げ、あし上げをそれぞれ単独で使えるのは3モーターのみ
4モーターは各メーカーによって仕様が異なります。
介護ベッドは特殊寝台として介護保険でレンタル可。
基本は要介護2以上だが、要支援・要介護1でも例外給付が可能な場合あり。
レンタル利用にはケアプランに組み込まれる必要あり。
料金は機種によって異なり、月800~1300円程度。(介護保険の自己負担1割の場合)
今回は「誤嚥リスクの低減」をうたう2メーカー
ヘッドレスト機能の元祖 シーホネンス
ハイバック機能が快適 プラッツ
(勝手にキャッチフレーズをつけてみました!)
のベッドを体験しましたので報告します。
シーホネンス株式会社 誤嚥予防機能付き介護用ベッド
「和夢 彩」(なごむ さい)の業界初のヘッドレスト機能
在宅介護用ベッド「和夢 彩」(なごむ さい)は、2014年に業界初、誤嚥リスクを低減するヘッドレスト機能として登場しました。
シンプルに2段階。
ヘッドレスト機能を使用するか、しないかを手動でかえることができます。
以下 シーホネンス福祉用具総合カタログより
コアネオシリーズ 誤嚥リスクを低減する電動ヘッドレスト機能
コアネオシリーズの4モーターベッド
「誤嚥リスクを低減する電動ヘッドレスト機能」
頭頚部の角度を0~30度の間で無段階に調整できます。
ちょっと見づらいですが、リモコンの1番上のボタンが「ヘッドレスト」です。
ヘッドレスト機能を使ったお客様の声
実際にヘッドレスト機能を使用している方の声として多いのは「何をされているかが見えるのがうれしい!」だそうです。
食事の介助や口腔ケアを受けるときに、ベッドアップ30度の視界では、確かに天井しか目に入りません。
見えないままに突然、スプーンが口元にくる感じなんですよね。
ヘッドレスト機能を体験
30度ヘッドレストが上がるのを体験してみると、想像以上に視界がぐっと下がりました。
枕をいくら入れても、この視界の変化は得られません!
枕なしでもあごがひけ、頸部前屈位がとりやすくなりました。
が、首から肩に少し圧迫感があるようにも感じたのが、残念でした。
私も先日、家族が作ってくださった嚥下食をベッドに寝ている利用者さんに見せようとしたとき、食物がこぼれそうで器が傾けきれず、断念したことがありました。
この頭の角度なら、器の中身を見せることもできそうですね。
誤嚥する前に予防的な使用を!
日常的に行われている枕やクッションでのポジショニングは、する人によって違いが出てくる、その違いを少しでも少なくできるように。
「リクライニング車いすより、ベッドの方がポジショニングが楽だよね」と言ってもらえるベッドを目指していると嚥下障害の勉強会にも行かれているという営業さんが熱く語られました。
営業さんいわく、このベッドをケアマネージャーさんに売り込みすると「誤嚥するようになったら考えます」と答える方が多いそうです。
「でも、それっていつからですか?誤嚥してからでは遅いですよね?」
確かに!
誤嚥する前に予防的に使い始めることを勧めたいですね。
超高齢な方、進行性疾患(神経筋疾患)の方は特に予防が肝心です。
シーホネンスのベッド その他の機能
認知症の方が、自分で操作をしてしまい、手足を挟まれる事故が起きていることから、動作ロック機能がつけられています。
今までの対策としては、コンセントを抜いてしまうか、リモコンをコード毎外してしまうか、しなければなりませんでした。
リモコンの裏側にロックがあるのですが、リモコンのコードについている専用ロックを差し込んで、楽にロックができます。
背上げの角度計もついています。
非常によく考えられています。
コアネオ4モーター 料金 レンタル&購入
レンタルの価格としては、標準タイプより介護保険で月に1000~2000点(自己負担1割で100~200円)高くなることが多いそうです。(レンタル価格は扱う業者によって変わります)
私なら、自分の家族のためだったら、月々の100~200円は全く惜しくないですね。
購入する場合はこれくらいの価格。
最初のヘッドレストが手動2段階のタイプです。
株式会社 プラッツ ラフィオポジショニングベッドシリーズ
ラフィオ ポジショニングベッドシリーズ
新しい背上げ。誤嚥リスクの低減、ズレ力の軽減に。
以下 超低床介護用ベッド 「ラフィオ」製品カタログより
1モーターから使えるハイバック機能
背上げの部分が途中で2つに分かれていて、別々の動きをします。
「ハイバック:頭―背部」「ローバック:腰部」の2つです。
胸椎8~9番辺りで、曲がるイメージだそう。
ハイバック機能は1モーターから使用可能というのがうれしいですね。
ただし、1モーター、2モーターでは、ハイバックは背上げと連動。
3モーターでは、ハイバックで単独で操作可。
ハイバック+ローバックで最大70度まで可能。
ローバックで70度でそこからハイバックを20度上げようとすれば、ローバックは50度に下がります。
ハイバック機能を使ったお客様の声
プラッツの営業さんとも話しました。
ハイバック機能を使われている方からは「テレビが見やすい」という声が多いとのこと。
呼吸器疾患の方が「呼吸が楽になった」と言われることもあるそうです。
また、身体のズレが少なく、背圧・腹圧がかかりにくいので、褥瘡予防としても、選ばれる方も増えていると言われていました。
ハイバック機能を体験
こちらも寝て体験しました。
ハイバック+ローバック+膝の連動した動きが非常に楽。
背上げ30度だけより、ハイバック20度+ローバック30度の方が身体が包まれるような感じ。
全く圧迫感がないので、呼吸が楽と言われる方が多いのもうなずけました。
自然に軽くあごもひけて、まさに嚥下しやすい姿勢!
大半が天井だった視界が全体に下がり、遠くまで見渡せるようになりましたよ。
導入事例の紹介
twitterで素敵なツイートをお見かけし、引用の許可をいただきました。
みのりんパパさんは訪問看護ステーションに勤務されています。
長年寝たきりの利用者さん、沢山の課題がある。中でも長時間過ごすベッド上でいかに楽な呼吸が出来るか!を検討してきた。家族、関係者に良いベッドの必要性を繰り返し説明。結果、ハイバックサポート機能が付いたベッド導入する事が出来た。僅か数度頭が上がるだけで呼吸がすごく楽になります! pic.twitter.com/NqyLYlFhNp
— みのりんぱぱ (@Nf9aRluOk0mHY0o) 2018年4月26日
先日ハイバックサポート機能付きの介護ベッドを導入した利用者さん。全身の筋緊張が落ちている!表情や筋緊張は客観的に判断できないけど、ハンドクッションの着脱がスムーズに行える!動く左手の手を挙げる回数が増えている!僅か数度のベッド角がQOLを変えはじめた!家族からも納得の笑顔が見れた。
— みのりんぱぱ (@Nf9aRluOk0mHY0o) 2018年4月27日
寝たきりの方のベッドをハイバックサポート機能付きに代えたら、呼吸が楽になった。
筋緊張が落ちて、手が動きやすくなった。
すごい変化!
楽な呼吸、楽な姿勢は、QOLまで変え始めるんですね。
私は身長が168センチですが、背骨のカーブが合っているように感じました。
ハイバックサポート機能使用時の屈曲位置は2段階(5センチ差)調整可能。
膝位置も2段階(5センチ差)の調整ができ、身長に合わせることができます。
ラフィオシリーズのその他の特長
超低床介護用ベッド という名前の通り、床面高15センチまで下がります。(ちなみにシーホネンスは25センチ)
下がるときは床面高が24センチになるとブザーを鳴らして一旦停止し、挟み込みを防ぎます。
そのままボタン押し続けると、ブザーを繰り返しながら最低位15センチまで下がります。
ベッドを下げるときにゴミ箱が挟まれた!なんて、あるあるだと思うので、いい機能ですね。
しかも、垂直昇降です。
スイングせずに垂直に昇降するので、設置面積が少なく済みます。
スイングするタイプだと、足側に壁とのスペースを開けておく必要があるので、部屋が狭い場合によいですね。
ハイバックとローバックの角度計がつけられます。
各所に工夫が見られます。
ラフィオシリーズ 料金 レンタル&購入
レンタル価格については聞き忘れましたが、ハイバックサポート機能は1モーターからありますから、レンタル標準価格内で選べると思います。(通常、モーターの数が増えるほど、レンタル価格は上がります)
購入の方はこちらを参考に。
背上げしたときの寝心地の快適さでいうと、個人的には「プラッツ」に軍配を上げたいです。
同行した夫は「シーホネンス」がよかったと言っていました。
寝心地は好みがありますから、可能であれば試してみるのが安心ですね。
まとめ
誤嚥予防機能がついた介護用ベッドがある。
誤嚥のリスクが高い方は予防的に使用するのがオススメ!
寝心地のよさ、テレビの見やすさ、呼吸のしやすさの点でも、長時間ベッド上で過ごす方にもオススメ!
病院STにお願いしたいこと
高価な介護用ベッド、ほとんどの方がレンタルを利用されます。
どのベッドがよいか、患者・家族に提案するのはケアマネージャーが多いと予想します。
もちろん地域からもケアマネージャーに対して、アピールしていきますが、退院してこられ、私のような訪問スタッフが入ったときにはすでにレンタルのベッドが入っていることがほとんどです。
病院のSTからもぜひ、「誤嚥予防できるベッドがあるんですよ」と患者・家族・ケアマネージャーに紹介いただけるとありがたいです。
シーホネンス株式会社
株式会社 プラッツ
ホームページのわかりやすさはプラッツさんが圧勝です。
この記事をtwitterにあげました。
先日行ったバリアフリー2018。
現地でパンフレットを見るまで知らなかったのですが、「誤嚥リスクを低減できる」機能がついた介護用ベッドがあるんですねー。
体験すると圧迫感が少なく、自然にあごをひく姿勢がとれましたよー。
介護用ベッドで誤嚥予防できる時代がきた!https://t.co/ZPXKVqfh3U
— STツムジ@介護分野 (@hidaritsumujist) 2018年4月27日
プラッツ公式さんから、直々にリプライをいただきました。
正鵠を得た商品説明とお墨付きをいただきました。
ありがとうございます!!
コメント
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