小説「0.5ミリ」あらすじ・感想 こんなラフな関係性の介護があってもいいね

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STツムジです。言語障害や嚥下障害、認知症のある方のお宅を訪問してリハビリテーションをする専門職、言語聴覚士です。小さい頃から本が好きで、図書館の近くに住む夢を叶えました。

 

介護系小説でもあり、ちょっとロードムービーのようなテイストもある不思議なお話に出会いました。

「0.5ミリ」  安藤桃子 著

安藤桃子さんは1982年生まれの映画監督。

ロンドン大学芸術学部を卒業し、ニューヨークで映画作りを学びます。

本作で小説デビュー。

監督として映画化されており、主演は、妹の安藤サクラさん。

サクラさんは主人公の、退廃的でけだるい雰囲気だけど心のどこかに燃えさかるものをたくわえている女性のイメージにぴったりだなあと思います。

表題作「0.5ミリ」とファンタジックな短編「クジラの葬式」が集録されています。

 

「0.5ミリ」 あらすじ  放浪系押しかけ介護ヘルパー 山岸サワ

訪問介護のヘルパーとして働く主人公、山岸サワは平田家に一年以上訪問している。

平田昭三は要介護4、娘の雪子、孫のマコトと同居中。

良性の脳腫瘍のため、認知症に近い症状が出ている。

 

ある日、サワは雪子さんに頼まれる。

おじいちゃんと一緒に寝てあげて欲しいの

昭三と一度だけ添い寝をして欲しいというのだ。

 

雪子さんの希望を叶え、添い寝をしたサワだが、翌朝、事件が起こる。

 

流産で子どもも子宮もなくし、離婚した過去をもつサワ。

加えて、家も、仕事も、全財産も失ってしまう。

どうにか「マネーメイキング」しなければ、カモになりそうなジジイを探そう。

 

他人の自転車のタイヤをパンクさせていた、ジジイ、茂ジイ。

ショッピングセンターの本屋で雑誌を万引きしようとしていた、ジジイ、先生。

先生のお宅には認知症の妻、静江さんがいた。

 

サワは次々にジジイの弱みを握って、家に転がり込み、家事や介護をすることになるのだが…。

昭三の孫、マコトとの再会もあり…。

 

「0.5ミリ」 感想 レビュー ヘルパーの腕は一流のサワ

お年寄りをカモにするといっても、サワはお金を巻き上げるようなマネはせず、細かな気遣いでお世話する。

あくまで押しかけヘルパーのような関わり。

 

サワのヘルパーとしての腕は一流だと思うんですよね

まず、料理が上手。

夜の献立は鶏団子の吸い物(白髪ネギがのっていた)、筍ごはん(木の芽山椒がのっていた)、キャベツの塩揉みと南瓜の煮物(良いあんばいにねっとり)だった。
吸い物はあっさりとした中にもおダシがよく取れてコクがあり、ネギも細く繊細だった。筍も薄味だがそれが一層山椒と筍本来の香りを引き立てており、塩揉みも煮物も私好みであった。上手いもので口福(こうふく)が満たされると今度は女の中身に興味がわいた。

料理の説明を読んでいると、お腹が鳴りますね。

 

家事を片付ける手際のよさ、丁寧な介護。

サワは最終的に、ジジイの心を開いて、信頼を勝ち取ります。

 

ちょっと強引でやけっぱちに見えるけど、不思議な魅力があるサワ。

きっと誰もがサワを嫌いになれないはず。

 

介護保険で訪問介護を利用すると、決められたサービス内容しか受けられないんですよね。

ちょっとした助けが必要なお年寄りには、サワのようなフリーの立場の介護が合っているのかもと思いました。相当に高い倫理観をもっていないと難しいでしょうけどね。

 

「0.5ミリ」まとめ

「放浪系介護ヘルパーはジジイの家に押しかける」

人との心の触れ合いが足りないなと感じたときにオススメの本だと思います。

こんなラフな介護があってもいいですよね。

 

映画も見てみたいですね。

コメント

  1. […] […]