小説「介護退職」あらすじ・感想 介護を理由にした離職はもう他人ごとではない

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STツムジです。言語障害や嚥下障害のある方のお宅を訪問してリハビリテーションの仕事をしています。

特に医療・介護がテーマの小説をよく読んでいます。

 

「介護離職」が大きな問題となっています。

介護離職とは、家族や親族の介護をのために退職をすることです。

平成29年就業構造基本調査結果によると、平成29年10月1日現在、過去1年間に「介護・看護のため」に前職を離職した者は9万9千人だそうです。

介護離職は決して他人ごとではありませんね。

 

ご紹介するのは、故郷に残した母親が要介護になり、奮闘するエリートサラリーマンの姿を描いた小説です。

 

「介護退職」  楡 周平(にれ しゅうへい)著


楡周平氏は

「介護退職」 あらすじ

主人公の三國は総合家電メーカーの国際事業本部に勤務する国際派ビジネスマン。

海外出張も頻繁で多忙な生活を送っている。

専業主婦の妻の和恵、中学受験を控えた息子の義彦と3人暮らし。

 

父親が亡くなってから7年、三國は毎晩実家の母親に電話を入れるのが習慣だ。

秋田の実家で一人暮らしをしていた76歳になる母親が雪かき時に転倒。

足首を骨折し、全治まで四か月から五か月かかる。

車いす生活の母親をバリアばかりの実家に帰すことはできない。

既婚の弟がいるが、経済的に厳しい状態にあり、頼れない。

 

息子の受験を終えて、母親を東京のマンションに引き取る決断をするも、住み慣れた生活から引き離され、ベッド上の生活を強いられた母親は認知症を発症し…。

母親の介護をしていた和恵も体調をくずし…。

キャリアを考えると、三國は母親の状態をなかなか会社に言い出せない。

三國は介護退職しなければならないのか…。

 

「介護退職」 感想 

三國の母親への想いに打たれます。

毎晩母親に電話を入れるほど、気にかけていても、備えが足りなかったと悔いる三國。

母親が転倒してから、いつも以上に思いを馳せます。

母は私の中で強い存在だった。父が亡くなった後も、気丈で病気一つするわけでもなかった。激務に追われ、私が倒れるのが先でも母は大丈夫だ。
一人暮らしをさせておけば、何が起きても不思議ではないという不安を抱きながらも、心の奥ではそうした気持ちを持っていたのかもしれない。
しかし今、眼前にいる母は確実に老いていた。

久しぶりに両親に会うと、老いを感じて、目を逸らしたくなることがあります。

 

「俺はさ、今回のことで気がついたんだ。これまで俺たちが何の憂いもなく外地に赴任できたのも、東京で自由に生活してこられたのも、すべてはお袋が元気でいてくれたからだって。そして俺たちの生活は、お袋に寂しい思いをさせてきた犠牲の上に成り立っているってことにね。だから、今ここでお袋を見捨てるような真似はできないんだよ」

自分にも思い当たるところが大きすぎて、心が痛くなりました。

いつ訪れるかもわからない親の介護。

備えておかなければ!と危機感をもちました。

 

「介護退職」 まとめ

自分も実家の両親と離れて暮らしています。

誇りをもって仕事をしているつもりです。

親が要介護状態になったとき、自分なら仕事をどうするか。

自分の身に置き換えて考えさせられる小説でした。

 

でも、最後はハッピーな方向に進んでいくので、読後感はいいですよ。
安心して読んでくださいね。

 

 

「母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記」はノンフィクションで、状況は違うのですが、男性の母親への気持ちが現れ出ている部分は共通しているのではと思います。

男はみんなマザコンだからなあと夫を見ていて思う日々です。

コメント

  1. […] […]