「注文をまちがえる料理店」あらすじ&感想 ま、いいかと間違いを受け入れ、一緒に楽しむ

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注文をまちがえる料理店

STツムジです。言語障害や嚥下障害のある方のお宅を訪問してリハビリテーションをする言語聴覚士をしています。

最近は、認知症を取り上げるテレビ番組が非常に多くなりましたね。

  • 「認知症になりたくない」
  • 「認知症になったら人生終わりだ」

多くの方がそんな気持ちで、関心を寄せている証拠でしょう。

 

今まで、言語聴覚士として、認知症の患者さんを担当してきました。

「認知症になっても幸せにすごすことはできる」とたくさんのご本人・ご家族から教えていただきました。

 

医療職の現実的な考えとして、認知症の最大の原因が「加齢」である以上、長生きをすればそのリスクは高まるばかりです。

どれだけ努力をしても認知症を完全に予防するのは難しいと思います。

また、現在の医療では、薬によって進行を遅らせることはある程度できても、認知症は根治はできません。

 

私の関心は「認知症を防ぐ」「認知症を治す」から「認知症とつきあう」「認知症とともに生きていく」へ移っていきました。

 

私が出会った認知症と楽に向き合えるようになる本をご紹介します。

 

「注文をまちがえる料理店」 小国士朗 著

忘れちゃったけど まちがえちゃったけど まあいいか

注文をまちがえる料理店の始まりは、テレビ局のディレクターである著者の小国さんが、和田行男さんが統括マネージャーをつとめるグループホームを取材していたときに経験した「間違い」がきっかけです。

和田行男さんは、プロフェッショナル~仕事の流儀~「闘う介護、覚悟の現場」に登場した認知症介護のパイオニアです。

第161回 和田行男(2012年6月25日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
プロフェッショナル仕事の流儀 これまでの放送

 

グループホームでは認知症の方も、買い物や料理を自分たちでやります。

その日の昼の献立はハンバーグと聞いていたのに、食卓にのぼっていたのは「餃子」

小国さんは「間違いですよね?」と言えませんでした。

グループホームの当たり前の暮らしが台無しになってしまう気がしたから。

 

ハンバーグが餃子になっても、誰も困らない。

認知症の方を型にはめる必要はない。

突然「注文をまちがえる料理店」というワードが浮かんだのだそうです。

 

小国さんは賛同してくれる仲間を集め、「注文をまちがえる料理店実行委員会」が発足。

 

2017年6月3日、4日の二日間限定で、東京都内にある、座席数12の小さなレストランで、試験的にオープンすることになります。

和田さんの施設介護施設から、気立てよし、やる気ありの6人をスタッフとして選んでもらいました。認知症がある方ばかりです。

 

世間の反響も予想外に大きく、小国さんは驚きます。

 

今足りない、おおらかさ・寛容さがそこにはある

料理店のなかはむちゃくちゃでした。

料理をまちがえる、テーブルをまちがえる、水を2つ出す、ホットコーヒーにストローがついてくることも。

それでも、お客さまはみんな楽しそう。

 

アンケート結果を見ると、60%以上のお客さまのテーブルで間違いがあったのに、90%が「またぜひ来店したい」と答えました。

料理を間違えられなかったことを残念がる人までいたそうです。

 

プロローグはここまで。

第1部「注文をまちがえる料理店」で本当にあったものがたりへすすみます。

 

三川さん夫婦のものがたり 

Story2三川さん夫婦、奥さまは6年前に若年性認知症の兆候が現れ始めました。

奥さまの脳は、左の頭頂葉が萎縮して、形状を認識する能力がひどく落ちてしまいました。

 

奥さまは幼い頃からピアノを学び、自宅でピアノ教室を開いていました。

ピアノを弾くことも難しくなりました。

同じ色、同じ形が並ぶ鍵盤を認識できなくなったからです。

ただ、音は耳が覚えていますから、鍵盤を押し、音を探しながら弾くことはできたのです。

 

レストランでピアノを弾かせてもらえないか、ご主人はお願いします。

ピアノを弾く奥さまと、チェロを弾くご主人の演奏が決まりました。

 

Story10 に続き、緊張の演奏の時間を迎えます。

 

大事にした2つのルール

小国さんたちが「注文をまちがえる料理店」を考えていくなかで、決めた2つのルールがありました。

①料理店としてのクオリティーにこだわる(オシャレでおいしい)

②間違えることは目的でない。だから、わざと間違えるような仕掛けはやらない。

 

②については特に悩まれたそうです。

認知症のある方にとっても「間違えることは、つらいこと」。

当事者の意見でこの当たり前のことに気付けたといいます。

 

「注文をまちがえる料理店」まとめ

今後、認知症の方の数は700万人まで増えるといわれています。

でも、おおらかさや寛容さが必要なのは認知症の方だけではないですよね

 

ほんのわずかな過ちでもたたかれ、さんざん痛めつけられる、この世の中の流れに息苦しさを感じている方は多いと思います。

「間違えてもいい」「大丈夫、大丈夫」「ま、いいか」

お互いの間違いを受け入れられる、迷惑をかけあって生きたらいいよという余裕ある社会になるといいなあと思います。

 

 

まちがえることを受け入れて

まちがえることを一緒に楽しむ

「認知症を抱える人」が接客する

不思議であたたかいレストランのものがたり

 

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