STツムジです。「話す」「食べる」の専門家で、ALSなど神経難病の方のお宅を訪問してリハビリテーションをしています。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は運動神経系の変性疾患です。
厚生労働省指定の「難病」として特定疾患に認定されている、現在では治療が難しい病気です。
ALSを正しく理解したい人におすすめの本・映画・ドラマなどを一覧にてオススメします。
- ALSを理解したい人におすすめの本(一般書)
- 逝かない身体 ALS的日常を生きる 川口有美子 著 2009年
- わたしは目で話します 文字盤で伝えるALSのことそして言葉の力 たかおまゆみ 著 2013年
- 宇宙兄弟 小山宙也 著 2008年~
- 99%ありがとう 藤田正裕 著 2013年
- 閉じ込められた僕 難病ALSが教えてくれた生きる勇気 藤元健二 著 2017年
- KEEP MOVING 限界を作らない生き方: 27歳で難病ALSになった僕が挑戦し続ける理由 武藤将胤 著 2018年
- ALS患者として生きる覚悟―難病の発症から二年半の自助と闘病の記録 田中繁夫 著 2018年
- 最後の医者は桜を見上げて君を想う 二宮敦人 著 2016年
- モリー先生との火曜日 ミッチ・アルボム 著 1998年
- 照る日かげる日 ALS患者たちの記録 ジュディ・オリバー編 1986年
- 不動の身体と息する機械 立石真也 著 2004年
- 末期を超えて ALSとすべての難病に関わる人たちへ 川口有美子 著 2014年
- 新ALSケアブック 筋萎縮性側索硬化症療養の手引き 2013年
- 在宅人工呼吸器ケア実践ガイドALS生活支援のための技術・制度・倫理 川口有美子 編 2016年
- ALSを理解したい人におすすめの映画
- ALSを理解したい人におすすめのドラマ
ALSを理解したい人におすすめの本(一般書)
逝かない身体 ALS的日常を生きる 川口有美子 著 2009年
ALSの母親を自宅で介護し看取った川口さんが書いたノンフィクション。
個人的にいちばんオススメしたい本です。
印象に残る部分を紹介します。
病が進み、まばたきも難しくなってきたお母さん。
目を閉じたままにしておくか、開けたままにしておくか本人も交えて話し合い、閉じておく選択をします。
「じき目の動きも止まります」主治医に告げられます。
眼筋が侵されはじめた時点で瞳が目の裏側か上部に留まったまま固定されなかったのは、たんに運が良かっただけなのだろうかと私は思いはじめた。
もしかしたら、母は瞼を「閉じたまま」にしておく決心をしたと同時に、瞳は前方に見据えたまま固定することに決めて努力したのかもしれない。もしかしたら、そのためには母は夜も寝ないで瞼の裏を見ながら起きている時間を長くしていたのかもしれない……。
眼球も動かなくなって固定されてしまうのです。
お母さんはどんな気持ちでそのときを迎えたのでしょうか。
わたしは目で話します 文字盤で伝えるALSのことそして言葉の力 たかおまゆみ 著 2013年
ALS当事者のたかおまゆみさんが、一冊まるごと目で話しながら書いた本。
目で話しながら書くとは、文字盤を使用し、一文字ずつ視線を読み取ってもらい書いていったそうです。
どれだけの時間と労力をかけてできたのか、想像すると尊敬しかありません。
一般むけの非常にわかりやすい本です。
ALSと「お母さん」たちという章の注目すべき内容をご紹介します。
人工呼吸器をつけないと生きていられないのに、「お母さん」たちはつけないことを選んでそのまま亡くなっていく人が多い。この「お母さん」というのはいまの五十歳代以降の女性で子どもや家族の世話をしてきた人のこと。
そういう女性たちが、呼吸器をつけたがらない。あるいは、つけさせてもらえない。
清水先生の説明にあったように、全国のALSの患者の男女比は約二対一である。ところが、人工呼吸器をつけた男女比は、八対二とも九対一ともいわれる。呼吸器をつけるのは、どうも「お父さん」や「おじいちゃん」らしいのである。
中略
たとえば、ALSの超有名女性患者・橋本操さんは「女はすぐ死にたがる」と発言している。
わたしも患者になるまで、そういうことは知らなかった。知ったときは、ショックでショックでしかたなかった。最初は、女性が呼吸器をつけたがらないのは個人的な性格によるものだと思っていた。だけどそうではなく、女性に「わたしは呼吸器をつけない」と決断させる力が、社会に働いていることに気付いてしまう。
たかおさんはこうも書いている。
いま、「お母さん」「おばあさん」患者のために必要なのが「二十四時間他人ケア」である。これがあたりまえに手に入るなら、多くの女性患者が呼吸器をつけられるはずなのに。
非常に考えさせられます。
宇宙兄弟 小山宙也 著 2008年~
漫画雑誌「モーニング」で連載中。
宇宙飛行士を目指す兄(ムッタ)弟(ヒビト)のストーリのなかで2人のALS患者が登場します。
なぜ設定としてALSが選ばれたのかは、こちらで読めます。
川口有美子さんの「逝かない身体」が決め手になったようですね。
99%ありがとう 藤田正裕 著 2013年
Eテレの番組でヒロさんのことを知りました。
END ALSという団体を立ち上げて、活動されています。
ヒロさんも視線とまばたきでこの本を書かれたそうです。
美しい写真がふんだんに取り入れられ、強いメッセージ性のある文章が並びます。
私が最も気になったフレーズを紹介します。
毎日の夢
朝の儀式(トイレや、身体をふいたり、着替えたり)が終わったら、
決定的瞬間がやってくる。毎日、ヘルパーがパソコンをベッドに運んでくるまでの
ほんの5~10秒の間に、
僕は夢をみる。毎日、考える。
「治療法がみつかったよ!」っていう、
100通のメールや、100個のフェイスブックの投稿があったら
どうしよう、って。ま・い・に・ち、欠かさず……。
いつかきっと、あなたのメールから、僕の人生は変わるだろう。
ALSのENDを強く強く願っているヒロさんの想いが伝わる本です。
閉じ込められた僕 難病ALSが教えてくれた生きる勇気 藤元健二 著 2017年
ALS当事者の闘病記です。
藤元さんは発症後もFacebookで投稿をされており、投稿に加筆・修正されて一冊にまとめられた本。
主に視線入力で書かれたそうです。
入院中にプリンしか食べられないと投稿したら、病室の冷蔵庫が50個のプリンでいっぱいになった、エピソードが藤元さんが慕われていたことを教えてくれます。
後半になるにつれ、細切れになる投稿、だんだん高まってくる息苦しさ、切迫感、リアルです。
藤元さんは本が発売された2017年3月25日から一週間後に逝去されています。
KEEP MOVING 限界を作らない生き方: 27歳で難病ALSになった僕が挑戦し続ける理由 武藤将胤 著 2018年
ALS当事者の武藤将胤(むとう まさたね)さんも最近よくメディアに登場されています。
2019年2月8日に気管切開をして人工呼吸器をつける手術を受けられたそうです。
soarのこちらの記事で武藤さんが紹介されています。
ALS患者として生きる覚悟―難病の発症から二年半の自助と闘病の記録 田中繁夫 著 2018年
最後の医者は桜を見上げて君を想う 二宮敦人 著 2016年
小説です。
3章あるなかの2章「とある大学生の死」でALSが出てきます。
医師を目指す女子大学生まりえがALSの診断を受けます。
両親の人工呼吸器をつけてほしいという気持ちにまりえは応えるのでしょうか?
モリー先生との火曜日 ミッチ・アルボム 著 1998年
ミッチ・アルボムはスポーツコラムニスト。
大学時代の恩師、モリー先生がALSに侵されていることを知って、会いに行きます。
毎週火曜日がモリーの授業にあてられるようになります。
テーマは「人生の意味」について。
モリー先生のことばを引用します。
だってね、人生に意義を認めていたら、逆もどりしたいとは思わないだろう。先へ進みたいと思う。もっと見たい、もっとやりたいと思う。六十五歳が待ち遠しくてたまらない。
いいかい、これはぜひ知ってほしい。若い人はみな知っていてほしい。年をとるまいといつも闘ってばかりいると、いつまでもしあわせにはなれないよ。しょせん年はとらざるを得ないんだから。
映画がDVD化されています。
照る日かげる日 ALS患者たちの記録 ジュディ・オリバー編 1986年
絶版になっているようです。私は古本で買いました。
不動の身体と息する機械 立石真也 著 2004年
歴代のALS当事者の語りをまとめた本。
4cmはありそうに分厚いです。
ALSの歴史や流れを学べる本。
末期を超えて ALSとすべての難病に関わる人たちへ 川口有美子 著 2014年
当事者、支援者、医師、看護師などさまざまな形で難病に関わる方と川口さんの対談集。
宇宙兄弟のことにも少し触れられています。
当事者、当事者家族、支援者、それぞれの立場から学べることが多い本です。
新ALSケアブック 筋萎縮性側索硬化症療養の手引き 2013年
私のALSのバイブルです。
当事者・家族・支援者全ての方に役立つ本です。
このブログで書いているALSに関する記事も主にこの本を参考にしています。
在宅人工呼吸器ケア実践ガイドALS生活支援のための技術・制度・倫理 川口有美子 編 2016年
ALSを理解したい人におすすめの映画
博士と彼女のセオリー 2014年
物理学者、スティーブン・ホーキング博士の半生を描いた映画。
ホーキング博士役のエディ・レッドメインの歩き方などの身体の動かし方がリアルだなあと思ってみました。
博士としてのストーリーというより、人(夫)としてのストーリーです。
ホーキング博士は2018年3月14日に逝去されました。
サヨナラの代わりに 2014年
ALSを発症し余命わずかと診断された女性と、彼女に介護人として雇われた女子大学生との交流を描きます。
ギフト 僕がきみに残せるもの 2017年
難病ALSを宣告された元アメリカンフットボール選手。
生まれてくる息子のために何が残せるか。
ALSを理解したい人におすすめのドラマ
僕のいた時間 2014年
2014年にフジテレビ系列で放送された三浦春馬さん主演の連続ドラマです。
毎週、泣きながら見ていました。
大学4年生の拓人(たくと)にALSの病魔が忍び寄ります。
幼なじみの恵や友人たちに支えられながら、病と闘っていく拓人。
人工呼吸器をつけることを望まないと決断した拓人であったが…。
必見です。
お得にネットでテレビドラマを見るのもいいですね。
ALSは私が言語聴覚士を目指すきっかけになった病気です。治る病気になることを心から祈っています。
参考にしていただければ幸いです。
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