STツムジです。在宅を訪問している言語聴覚士です。言語聴覚士は脳卒中や神経難病の方への「食べる」「話す」リハビリテーション専門職です。
「嚥下障害」(=食べたり、飲み込んだりすることが難しくなること)のリハビリテーションを担当していると、食事中や食後の咳についての相談をよく受けます。
脳卒中などの病気がなくても、咳やむせに悩んでいる方の多さに驚きます。
どうしてご飯を食べると咳が出るの?
食後に咳が出るの理由は?
なぜ食事中や食後に咳がでるの?という「咳」と「むせ」への疑問にわかりやすくお答えします。
咳とは何?なぜ咳は出るの?
「咳」は医療用語では「咳嗽」(がいそう)と言います。
なぜ、咳が出るのでしょうか。
咳は呼吸器になんらかの異常が生じた場合の最初のサインです。
喉頭(のど)や気管支がセンサーとなり、異常を感知すると、最初に咳が出ます。
つまり、咳とは「気道内の異物や分泌物を除去するための防御反応」です。
咳のしくみ
咳を出すきっかけとなる刺激は、気道から呼吸中枢がある延髄へと瞬時に伝わります。
脳が「咳を出せ!」と命じると、
- 身体は大きく息を吸い込み
- 吸い込んだところで息を止めて声門を閉じ
- 空気を一気に吐き出す
という流れが瞬間的に起こります。
声門を閉じたときには胸郭内(胸骨・肋骨・脊椎・横隔膜で囲まれたエリア)の圧力が300mmHgになるそうです。
300mmHgと聞いてもピンとこないかもしれませんが、このmmHgという単位は血圧の単位と同じです。血圧が300mmHgと考えたら、大変なことですよね。
実は、私は昨年末、咳が1か月ほど続き、肋骨を疲労骨折してしまいました、咳で胸郭にかかる圧の大きさが想像できますね。
ご飯を食べると咳が出る理由は?食事中になぜ咳が出るの?
ご飯を食べると咳が出る理由は、食べ物や飲み物が気管に入りかけたり、入ったりするからです。
私たちののどは、呼吸の道と嚥下の道が交差しています。
道を共有していると言った方がわかりやすいかもしれません。
嚥下の道に進むべき、食べ物・飲み物が誤って、呼吸の道(気管)に入ってしまう(または入りかける)とむせが起きます。
空気を強く吐き出して、誤った侵入者を気管から出そうと体が働くのです。
このむせも生体防御反応ですね。
ちなみに、食べ物・飲み物が気管に間違って入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といい、誤嚥が元で起きる肺炎が「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。
むせたときの対処法はこちらをどうぞ。
食後に咳が出る理由は?食後なぜ咳き込むの?
時々、食事中は比較的問題がないのに、食後に咳が出る方がいます。
食後のむせは、のどに食べ物が残っていて、時間がたってから、その食べ物が呼吸の道(気管)に入りかけたり、入ってしまったりすることが原因です。
のどの感覚の低下が疑われます。
「あー」と声を出してみて、ゴロゴロした音が聞こえたら、のどに食べ物が残っている可能性があります。
- 食事の最後に水分をとる
- 強く咳払いをして再度飲み込む
などして、のどの食べ物を飲み切るようにします。
ただし、食事中・食事後の咳は、逆流性食道炎で起こっている可能性もあります。胸やけがしたり、口に苦いものが上がってくるような場合は、消化器内科医にご相談ください。
唾液でも咳が出る
以前に、長引く咳で風邪だと思っていたら、実は唾液でむせていたという方がいらっしゃいました。
まさか、唾液のせいでむせていたとは予想していなかったと言われていました。
唾液は一日に1000~1500ml(高齢者だと500ml程度)出ています。
私たちは自然に飲み下しています。
嚥下障害があり、唾液嚥下がうまくいかないために出る咳が風邪のためだと誤解されることがあるので要注意ですね。
まとめ
咳は体に入ったものを出そうとする、生体防御反応である。
ご飯を食べると咳が出たり、食後に咳き込むのは、食べ物・飲み物が誤って気管に入りかけたり、入ったりするためである。
本来、入ってきてはいけない侵入者から、咳(むせ)が体を守ってくれると考えることもできます。咳(むせ)は怖いものと思われがちですが、私たちの体に欠かせない大事な働きですね。
参考図書
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