食事介助の方法 注意点を共有しよう「伝わるはり紙」のポイント6つ

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ST(言語聴覚士)むけ

ST(言語聴覚士)が嚥下障害患者さんに関われる時間には限りがあります。

一番コンスタントに関われる病院でも原則、1日1回。

STのマンパワーが不足していれば、毎日関われない場合も多々あると思います。

 

ましてや訪問では、 頻度は多くて週に1回程度が標準ではないでしょうか。

 

嚥下障害に関わるSTの悩み。

  • 患者が自分が伝えた摂取方法を守ってくれない
  • 家族の食事介助は自己流に戻ってしまう
  • 自分が最適と評価し・指導した方法が、看護師やケアスタッフに周知されない

勤務先が病院・施設であれ、在宅であれ、同じだと思います。

 

この悩みの解決策。

いちばん簡単でわかりやすい方法は食事の注意点を掲示することです。

 

端的に言えば、はり紙です。

こういったはり紙をベッドサイドに。

直接、口頭で伝えられない相手にも伝えられ、また介助者は何度でも見返すことができます。

 

この方法を利用しているSTは多いと思います。

が、きちんと「伝わる」ことを意識して、作っていますか?

伝わるはり紙の作り方をお伝えします。

 

そのポイントです。

 

評価に基づいて、簡潔に

文字は大きく写真やイラストでわかりやすく

方法と合わせて目的・理由が必要

伝えたい相手に合わせた表現を

問い合わせ先を必ず

個人情報に注意

 

 

ポイントごとにみていきます。

 

評価に基づいて、簡潔に

評価があってこその食事の注意点ですよね。

はり紙に必要な項目をあげます。

つまり、この項目が評価できていないといけませんよということです。

  1. 環境
  2. 姿勢
  3. 摂取方法(自力or見守りor介助)
  4. 食形態
  5. 水分摂取方法(とろみの濃度+使用食具)
  6. 一口量
  7. むせたときの対応
  8. 食後のベッドアップ時間
  9. 口腔ケア方法
  10. 特記事項

細かな評価の内容については、別記事を参照ください。

 

文字は大きく写真やイラストでわかりやすく

18フォント以上はあるとよいと思います。

姿勢や食器のセッティング方法などは写真・イラストがあれば、ひとめでわかります。

 

介助者に一番伝わりにくいと感じるのは姿勢です。

特に首の角度や顔の向きなど、決まっているなら、ぜひ写真を。

写真は患者・家族に了承を得て、撮影・使用しましょう。

イラストが得意な人はそえてもいいですね。

 

 

方法と合わせて目的・理由が必要

例えば、

  • 介助者は座って介助をお願いします。
  • 食後は30分ベッドアップを保ってください。

と書かれていたとします。

これは伝わりにくいです。

 

介助者が目的・理由を理解できないことは、やってもらえないと思った方がよいです。

書くなら

  • 介助者が立っていると、顎が上がってしまうため、座って介助をお願いします。
  • 逆流を防ぐため、食後30分はできるだけベッドアップを保ってください。

が伝わります。

 

 

伝えたい相手に合わせた表現を

介助者は誰か、誰にむけて書くか意識します。

相手の理解力にあった、ことばを選びます。

  • 頸部前屈位

は伝わりません。

  • あごをひいた姿勢
  • 枕の下に丸めたバスタオルを入れてあごをひいた姿勢

は伝わります。

 

例えば、このはり紙です。

 

理解力に不安のある患者・家族のために作ったものです。

漢字にはすべてかなをふりました。

食形態は食べるのが難しい物を具体的に挙げました。

本人へのメッセージをそえました。

 

 

問い合わせ先を必ず

所属、氏名、連絡先をそえます。

 

 

個人情報に注意

病院・施設等では個人情報保護により、ベッドサイドへの掲示が難しい場合があります。

私が以前勤務していた病院ではベッドサイドには掲示できませんでした。

固めのクリアケースに開けた穴に紐を通して、紙を入れ、床頭台に置くか、ベッドの支柱にかけられる場合はかけていました。

個人情報への対応については、勤務先にご確認下さい。

 

 

具体的な症例を通して、考えてみましょう。

症例A(訪問の利用者と仮定)

  • 80代 男性
  • 診断名:多発性脳梗塞、脳血管性認知症、嚥下障害
  • 妻と2人暮らし
  • 要介護4 訪問看護・訪問介護を利用 朝食は訪問介護で食事介助
  • 妻がミキサー食を調理している
  • 食思不振のため、往診医師より、エンシュアリキッド1本/日処方あり

<訪問時の評価>

  • 45度程度にベッドアップしているが、お尻の位置が下がっている
  • 声量は十分で意思疎通可能。構音障害はごく軽度
  • 常時痰がらみあり。促せば喀出できることがある
  • 口腔内はやや乾燥
  • 残存歯は前歯2本のみ、義歯は持っているが使用せず
  • 妻の介助で摂取
  • 食事中、水分でむせあり
  • とろみははちみつ程度
  • 水分はコップ飲み。妻がコップを傾けすぎて、一口量が調整できていない
  • 介助時、妻が立っているため、利用者の下顎が上がりやすい

 

実際に作ったはり紙がこちらです。

個人情報保護のため、写真は削除してあります。

enge-harigami

 

・体の位置が下がっているときは、ベッドを平らにして、上方へ移動(柵をもって自分でできます)→実際に試していただいて書いています。

 

・エンシュアはとろみが安定すまでに時間がかかるので、早めにつけておく方がよいです。→摂取されているものについて具体的に書きます。

 

 

ポイントをもう一度確認します。

評価に基づいて、簡潔に

文字は大きく写真やイラストでわかりやすく

方法と合わせて目的・理由が必要

伝えたい相手に合わせた表現を

問い合わせ先を必ず

個人情報に注意

 

 

近年、誤嚥による医療訴訟が増えてきています。

はり紙が、STが介助者に指導を行った証になり、自分の身を守ることにもつながると思います。

コメント

  1. […] […]