STツムジ@介護分野です。
病院で働いたあと、今は訪問看護ステーションに所属するSTです。
今回は日本言語聴覚士協会に入会すべきか?がテーマです。
言語聴覚士国家試験に合格した、働き始めた段階で入会を迷っている方もいるのかもしれません。
すでにSTとして働いていたのに入会していなかった方が、同期の○○が摂食嚥下障害領域の認定言語聴覚士とったんだってなどと聞き、入会をあらためて、考えているのかもしれません。
1人職場でSTをしてきた方が、学会発表など新しいことに挑戦したい、環境を変えてみたい、そのきっかけを探して、入会を思いついたのかもしれません。
私個人的な意見ですが、日本言語聴覚士協会に入ることはメリットの方がはるかに多いので、入るべきだと考えます。
協会には言語聴覚士の何割が入っているの?
日本言語聴覚士協会は言語聴覚士の職能団体であり、全国規模の唯一の団体です。
私は言語聴覚士国家試験に合格した直後に入会し、ずっと会員です。
病院によっては入会が義務づけられているところもあります。
私が以前に所属していた病院もそうでした。
今の職場は入会している人と入会していない人が半々程度のようです。
全国的に見ると
2019年5月13日現在 有資格者数が32,863名
言語聴覚士協会正会員数 18,000名
組織率は54.7%
つまり10人の言語聴覚士のうち、およそ6人が入会している計算になります。
日本言語聴覚士協会はどんな組織?
本協会は、ことばによるコミュニケーションに問題を持つ方々に良質の専門的サービスを提供し、その生活の質の向上と社会参加を支援していくことを目的の1つとしています。この目的を実現するために、言語聴覚士が自由に情報交換をし、ともに研鑚する場面の提供し、学術集会や研修会、講演会などの開催、コミュニケーション障害に関する調査・研究、協会ニュースなど刊行物の発行、関連のある諸団体や障害がある方々との連携、交流など、幅広い活動を行っています。
日本言語聴覚士協会のHPより引用
<日本言語聴覚士協会の目的>
ことばによるコミュニケーションに問題を持つ方々に良質の専門的サービスを提供し、その生活の質の向上と社会参加を支援していくこと
<日本言語聴覚士協会の主な事業>
・日本言語聴覚学会(年1回)・全国研修会・認定言語聴覚士講習会・実務者講習会訪問リハビリ管理者研修会などの開催
・調査研究活動(コミュニケーション障害に関する調査・研究)
・社会活動・学術活動(職場を確保する活動、地域組織を充実させる活動等)
・広報活動(9月1日を言語聴覚士の日と定め、様々な広報活動を実施)
・学術誌『言語聴覚研究』の発行
・情報誌『ST AND UP』の発行
などが挙げられます。
日本言語聴覚士協会入会のメリット
協会入会のメリットを7つあげます。
損害責任保険の基本補償の加入
日本言語聴覚士協会が団体として加入しているので、損害責任保険の基本補償は正会員入会時に自動的に加入となります。
基本補償とは、対人賠償補償、人格権侵害補償を言います。
対人補償とは業務上の過失により利用者の身体に障害が発生した場合の損害に対する補償であり一事故3000万円(期間中9000万円)、人格権侵害補償は一事故300万円(期間中300万円)限度で補償されます。
基本補償の保険料が年会費に含まれていますので、他に支払う必要はありません。
個人的には入会のメリットのうち、保険自動加入のメリットが一番大きいと思います。
損害責任補償のために入会してもいいんじゃないかと思っているくらいです。
追加補償制度に任意で加入することもできます。
対人賠償補償が一事故1億円(保険期間中3億円)
対物賠償支払限度額が一事故保険期間中100万円(免責金額一事故1000万円)
病院の備品や患者さんの私物等を破損してしまった、弁償しなければならないような場合に、補償されるということです。
こちらは年間保険料1600円が必要です。
嚥下リスク管理 嚥下の同意書をとっていますか?
でも書いたのですが、訪問に限らず、摂食嚥下に関わるSTはリスクが高い仕事です。
誤嚥や窒息の事故で医療・介護職が訴えられるケースが年々増えています。
ケースによって異なりますが、賠償金を支払うよう命じる判決が出ている訴訟もあります。
万が一の時に備えて、保険に入っていることは心強いバックアップになりますよ。
日本言語聴覚学会(ST学会)で発表できる
日本言語聴覚学会参加だけなら非会員でも可能。
(正会員と比べると参加費が3000円程高い)
日本言語聴覚士学会で発表するためには日本言語聴覚士協会員である必要があります。
筆頭演者は本協会の正会員・準会員・学生会員とします。
共同演者は本協会会員であることを問いませんが、言語聴覚士の場合は本協会会員に限ります。未入会の方は事前に入会手続きをお取りください。入会には理事会の承認が必要ですので、早めにお手続きをお済ませください。
第19回日本言語聴覚学会HPより引用
私は以前の職場の病院で2回、日本言語聴覚士学会で発表しました。
今の職場の就職試験を受けたときに、「ツムジさん、ST学会で発表されていましたよね?」と、その後上司になるSTに言われました。
上司は、高次脳機能障害へのアプローチを検索していて、私の発表にたどり着いたようでした。
学会発表の経験は、転職の武器になります。
積極的に学ぶ姿勢があるとして評価されます。
学会発表はもちろん自己研鑚にもなりますしね。
STが属する学会は他にもたくさんありますが、日本言語聴覚学会での発表は一番目に留まりやすいと思います。
認定言語聴覚士にステップアップできる
認定言語聴覚士とは高度な知識および熟練した技術を用い高水準の業務を遂行できる言語聴覚士を養成することにより、業務の質の向上を図り社会に寄与することを目的として、制定されました。
現在までに
- 摂食嚥下障害領域
- 失語・高次脳機能障害領域
- 聴覚障害領域
- 言語発達領域
- 成人発声発語障害領域(2018年新設)
の領域で認定言語聴覚士が制定されています。
【受験資格】
1)満5年を超える臨床経験があり、生涯学習システム専門プログラムを修了した方
2)平成30年度の会費を納入済みの方
となっていますので、協会員であることが前提条件です。
認定言語聴覚士はSTとしてキャリアップには欠かせませんね。
というもの、私は生涯学習システム専門プログラムを終了し、受験資格まで取りましたが、まだ受験していません。
この辺りは思うところがありますので、また書きたいと思います。
学術誌「言語聴覚研究」で最新の研究・論文が読める(論文投稿できる)
このような冊子が年4回送られてきます。
ここ数年、日本言語聴覚学会の抄録集が入るようになりました。
抄録集(№3)だけ厚いです。
最新版(2018年№1)の目次です。
言語聴覚研究は完全な論文集ですね。
論文を読むのに慣れる導入としては最適だと思います。
言語聴覚研究の投稿規定からの抜粋です。
言語聴覚研究に論文を投稿する場合、論文投稿の筆頭著者は原則として、本協会の会員とします。共著者は本協会員であることを問いませんが、言語聴覚士の場合は本協会員に限ります。
論文の筆頭著者として投稿するには、言語聴覚士協会の協会員である必要がありますよ。
情報誌「ST AND UP」で幅広い情報が得られる
このような冊子が年6回送られてきます。
内容は、言語聴覚学会・全国研修会等の案内や報告、協会活動の紹介、お知らせなどが載っています。
講習会、勉強会、セミナー情報も豊富です。
病院やリハビリテーション方法の紹介記事。
災害対策活動に関する記事。
こちらは介護保険領域の記事。
STの職域では、成人の摂食嚥下や失語症をみている割合が圧倒的に多いです。
小児・聴覚・学校教育・地域リハビリテーション等は正直マイナー分野です。
マイナー分野も網羅する幅広い情報が載っているのはとてもありがたいですね。
言語聴覚士協会に登録された求人情報が見られる
協会ホームページのマイページ(会員限定ページ)にログインすると、求人情報が見られます。
2018年4月現在で、20件の情報が掲載されてます。
協会ホームページから資料のダウンロードができる
同じく協会ホームページのマイページから協会が出している資料がダウンロードできます。
・急性期における言語聴覚リハビリテーションの指針
・学校境域における言語聴覚士の役割
・「臨床実習マニュアル」改訂版
等が掲載されています。
こんなサービスもあります。
最新情報をメルマガ方式でまとめてお知らせ。
SupporTだそうです。
マイページにログインして設定ページに進むと
講座情報設定(希望カテゴリーと開催地)
求人希望設定 (求人情報と希望勤務地)があります。
配信を希望すると、週1回まとめて、登録した情報のみ送ってくるとのこと。
便利そうですね。
日本言語聴覚士協会入会のデメリット
年会費が高い
言語聴覚士協会 正会員年会費 10000円
(入会年度は入会金3000円プラス年会費5000円)
学生会員だった場合は入会金が免除、再入会は再度入会金の3000円が必要。
就職したばかりの方には負担が大きく感じるかもしれませんね。
私が以前に勤めた病院では、入会が義務付けられており、その代わりに、初年度の入会費と年会費、翌年度からの年会費の半分を病院が負担してくれていました。
ただし、先ほどメリットであげた損害責任補償の保険料を含むと考えれば、個人的にはそれほどコスパが悪いとは思いませんが。
ちなみに理学療法士協会の年会費は11000円だそうです。
理学療法士協会は年会費が楽天カードで払えるんですね。
日本言語聴覚士協会はまだ引き落とし手続きしかできません。
日本言語聴覚士協会は会費の支払い方法が「引落、クレジットカード、または振込」から選べます。
協会ホームページ、マイページ内会員情報から支払方法は変更が簡単にできます。
まとめ
日本言語聴覚士協会入会のメリット・デメリット
メリット
- 損害責任保険の基本補償の加入
- 日本言語聴覚学会で発表できる
- 認定言語聴覚士にステップアップできる
- 学術誌「言語聴覚研究」で最新の研究・論文が読める
- 情報誌「ST AND UP」で幅広い情報が得られる
- 言語聴覚士協会に登録された求人情報が見られる
- 協会ホームページから資料のダウンロードができる
デメリット
1.年会費が高い
日本言語聴覚士協会はメリットの方が圧倒的に多いので、個人的には入会をオススメしたいです。
迷うなら、「損害責任補償のため」と思って、入会してみてもいいと思います。
「言語聴覚士としてのキャリアアップになんて興味がないしー」とつっぱっている人ほど、実は、学会発表や論文執筆、研究活動への憧れがあるんじゃないかと思うことがあります。
心の奥のどこかでは憧れながら、自分とは遠い世界のように感じているのではないですか?
入会は、憧れの世界への第一歩だと思いますよ。
もしも、言語聴覚協会に入会はしなかったとしても、個人で損害責任保険に加入することを強く勧めます。
入会方法・お問い合せ先
https://www.japanslht.or.jp/nyukai/協会ホームページ入会手続きページへ
日本言語聴覚士協会 事務所
電話 非公開
FAX 03-6280-7629
インターネットお問い合せフォームへ
コメント
初めまして。介護保険分野で働いてるSTです。
いつも楽しく読ませて貰っています。
日本言語聴覚士協会の会費の支払いについてですが、銀行引き落としだけではなく、銀行振り込みやクレジットカードでも可能ですよ。
私は毎年カード払いにしていますので。。。
老健ST様
コメントありがとうございます。
介護保険分野!お仲間ですね。
いつも読んでくださっているとのこと、うれしいです。
日本言語聴覚士協会のマイページで確認しましたところ、方法は「引落、クレジットカード、または振込」から選択可能となっていました。
私の確認不足でした。
記事を訂正します。
ご指摘ありがとうございました!
今後、正確なブログを書くように努めていきたいと思います。
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