水分でむせる患者さんへの対応として一番に思い浮かべるのは何ですか?
多くの方が「とろみをつける」と答えると思います。
在宅でもかかりつけ医に、
「とろみをつけるよう言っておいたから、頼むね」
と声をかけられることがあります。
医師の立場でも、嚥下障害=とろみのイメージは強いですね。
とろみをつけるときの悩みといえば
- とろみ剤がとけない
- とろみが均一でない
- かき混ぜるのが面倒
- とろみがつかない
- ダマになる
などが挙げられると思います。
この悩みを一気に解決できる画期的な方法があります!
とろみ水(とろみ茶)の作り方、とろみ剤の使い方の注意点をご紹介したいと思います。
そのとろみつけの方法を知ったのは私が回復期病棟を担当していたときのことです。
病棟にとにかく仕事のできるスーパー看護師がいました。
ひとつひとつの仕事が「センスが違うよね」としか言いようのない方でした。
回復期病棟にはデイルームがありました。
食事に介助や見守りが必要な患者さんが集められる部屋です。
その部屋には、患者さん毎の必要なとろみ量の一覧表が貼ってありました。
一覧表にはコップ1杯のお茶に対して、小さじ何杯が必要か書かれていました。
Aさん1杯 Bさん2杯 というように。
それを見ながら、看護師や介護スタッフがお茶の入った大きなやかんでとろみ茶を作っていました。
ある日の昼食時、デイルームで嚥下障害のある患者さんの食事を介助していたときのこと。
気づいたんです。
あれ?
今日のとろみ茶には全くダマになっていない。
今日のお茶当番はスーパー看護師だ!
私はスーパー看護師をつかまえて聞きました。
「だまにならないとろみ茶の秘密を教えてください!」
スーパー看護師は「ちょっとおいで」と、実際に見せてくれるというのです。
私はじっとスーパー看護師の手元を見つめました。
スーパー看護師はコップにとろみ剤を入れて、やかんで一気にお茶を注ぎました。
首をかしげる私にスーパー看護師は笑って言いました。
「簡単なことだよ。先にとろみ剤を入れるだけ」
え?それだけ?
「何かかくしていませんか?」私。
「そんなわけないじゃん♡」スーパー看護師。
本当にそれだけだったのです。
一気にお茶を注ぐことで、コップのなかでお茶の対流が起こり、とろみ剤がまんべんなく溶ける。
混ぜる必要もなく、均一にとろみがついていました。
ポイントは一気に勢いよくお茶を注ぐということです。
ペットボトル、やかん、急須、水筒、何からでもいけます。
ただしコップがぬれているととろみ剤がコップの底にはりついてしまうので要注意です。
とろみ付けのお悩みの
- とろみ剤がとけない→とける
- とろみが均一でない→均一になる
- かき混ぜるのが面倒→混ぜる必要なし
- ダマになる→ダマにならない
一挙に解決です。
発想の転換でしたね。
コップに入ったお茶ありきで、考えていた固定観念をひっくり返されました。
しかも、お茶が先に入っている場合は、とろみ剤を入れながらお茶をガシガシ混ぜていました。
混ぜなくてもいいから楽ですね。
他の看護師とスーパー看護師の様子を見比べていると、もう1つわかったことがありました。
この方法はたくさんのコップを並べてお茶にとろみをつけるときにも便利だということ。
お茶を入れてから、とろみ剤を入れると、どのコップまでとろみをつけたかがわからなくなります。
先にとろみ剤を入れれば、どのコップまで入れたか一目瞭然ですものね。
みなさん、ちょっと想像してみてください。
インスタントのココアを作るとき
カップスープを作るとき
お湯と粉とどちらを先に入れますか?
99%の方が「粉」ではないでしょうか?
本来、粉が先の方がいいと私たちは知っているんですよね。
でもなぜか、お茶のとろみに関しては、お茶が先という固定観念を持ってしまっています。
誤嚥性肺炎について書かれた本ではこのように紹介されていました。
介護する人のための
誤嚥性肺炎
こうすれば防げる!助かる! より引用
稲川利光著
2つのコップを使って、お茶を移動させる方法です。
先にとろみ剤を入れておいて「勢いよくお茶を注ぎます」
これも原理は同じですね。
ただし、コップを2つ使うということは、洗い物が増えるということ。
ここはマイナスポイントです。
非常にシンプルですが、絶対に役立つコツでした。
お試しくださいね。
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