STツムジ@介護分野です。
日々、利用者さんのお宅を訪問している古参の言語聴覚士です。
言語聴覚士は「食べる」「話す」のリハビリテーションの専門家です。
バリアフリー2018に行ってきました第4報です。
「ハンズフリー型ウェアラブル電気式人工喉頭」に惹かれて、NEDOの第一医科のブースに行きました。
ちなみにNEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のこと。
「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」に基づき、福祉用具の製品開発を担う民間企業とユーザー評価を担う機関・個人が連携した開発・実用化を支援します。
だそうです。
ハンズフリー型人工喉頭を開発しているのは第一医科株式会社
耳鼻咽喉科領域の医療機器専門メーカー。
人工喉頭「ユアトーン」等の医療・福祉機器の製品開発や販売をしている会社です。
ハンズフリー型ウェアラブル電気式人工喉頭の製品化を目指して
首バンドで音源を固定し、手元スイッチで操作できるタイプの人工喉頭です。
既存の人工喉頭はこのような形です。
既存の人工喉頭は必ず手で持ってのどにあてて使用する必要があるため、電話しながら、メモを取りながら使えないのが不便だという声に応えて開発されたそうです。
目的:既存の電気式人工喉頭をハンズフリー化し、喉頭摘出者のQOL向上や社会参加に貢献
概要:両手を自由に使いたい要望に応え、首バンド・音源・センサー・拡声器を開発。
日常生活で違和感なく使えるようなデザインに。
ベルトでこのように固定します。
手元スイッチの写真を撮らせてもらうのを忘れましたが、スイッチを親指にはめて、親指を人差し指方向にあてて操作されていたように記憶しています。
質問しました。
「既存の人工喉頭を使う方がのどにあてるときに一番響く場所を探して、あてる角度や場所を微妙に調整しているように思うんですが、固定して大丈夫なんですか」
⇒人工喉頭を使い慣れてくると、あてる場所を探すというより、「ピンポイントでここにあてたい」という使い方になってきます。固定して上手く使えると考えています。
なるほど、上級者むけというわけですね。
開発が進み、製品化されたら、喉頭がんで喉頭を手術で摘出し、仕事に復帰、仕事中に使用したいというようなニーズに応えられそうです。
そもそも、人工喉頭ってなんだろう。
何の目的でどんな人が使うのだろうと疑問に思われた方は続きをどうぞ。
電気式人工喉頭ユアトーンの最新機種について知りたい方もぜひ。
人工喉頭ってなに?
声を出せない方の発声を補助する器具です。
人間は呼気(吐く息)で、のどにある声帯という膜を震わせることで「音源」を作ります。
「音源」である振動音に舌や口唇の動きを加えることで、発音ができます。
「音源」を失った方の、音源の代わりになるのが、人工喉頭の「ブー」という振動音。
写真のように人工喉頭をのど元に押し当てて、使用します。
以下、電気式人工喉頭 ユアトーンのカタログより引用
対象は喉頭摘出をした方、気管切開をした方等。
喉頭摘出では声帯もいっしょに取ってしまうため、音源を失います。
喉頭がん、咽頭がん、食道がんで喉頭摘出がされる場合があります。
気管切開をすると呼吸の道筋が変わる(呼気が口まで行かず、のどに開けた穴から出る)ので、声帯がある部分を呼気が通らなくなります。
また、誤嚥防止手術としての気管食道分離術後の方もあてはまりますね。
自分で「音源」を作れなくなるため、のどに人工喉頭を押し当てて、外から音源を作るわけです。
ユアトーンの使い方
①スイッチを押して「ブー」という振動を出す
②口唇を「あ」の形にして、ユアトーンの振動する部分をのどにあてる
いろいろな場所にあててみて、振動音が口のなかで一番響く場所を探す
③一番響く場所にあてて、舌や口唇を動かす
ユアトーンは2種類
①標準型(押ボタン式スイッチ)
押しボタンを押すだけで操作が簡単、ただし声の抑揚がない発声。
②高機能型(スライド式スイッチ)
スイッチを上下にスライドさせ、声の抑揚をつけられる。
モードを切り替えれば、標準型と同じ抑揚のない発声も選択可。
歌モードには約2オクターブの音域あり。
同異義語の区別(例:雨と飴)
語尾を上げて疑問文を表現(例:おいしい。とおいしい?)
ユアトーンの特長は?
ユアトーンは国産初の電気式人工喉頭で、発売開始から約20年。
国内メーカーなので、迅速な修理対応ができます。
①数字が大きく見やすい調節ダイヤル
話しながら片手で音量調整が可能、10段階で音の大きさを調整。
②スイッチを押すとすぐに話せる
主電源は入れたまま、話したいときにスイッチを押せば話せます。
スイッチを離すと自動的に省電力モードになり、主電源を切らなくても電池の消耗が抑えられます。
従来の機種は話したいときに毎回主電源を入れる必要があり、「手間がかかる」との声に応えて、新しくく加わった機能だそうです。
③隠しスイッチ
普段はあまり使用しない主電源・音程・抑揚有無等のスイッチは裏蓋内に。
⓸やわらかい声を響きやすい形状
研究開発により「ゆらぎ音声」を組み込み、やわらかな声を実現。
のどに当てる部分に丸みがあるため雑音が漏れにくく、声が響きやすい。
ユアトーンの仕様
非課税商品です。
標準型と高機能型の差は2千円。
高機能型の抑揚スイッチを切れば、標準型と同様の使い方が可能。
歌モードが、標準型では内蔵された2曲から選択、高機能型では2オクターブの抑揚操作による自由な歌唱(内蔵曲なし)となっています。
ユアトーン(電気式人工喉頭)は日常生活用具給付対象商品
<喉頭を摘出された方>
手続き方法や適応条件、詳しくはお住いの市町村役所の福祉窓口にお問い合せ下さい。
<喉頭摘出以外の理由で話すことができない方>
音声機能障害や言語機能障害に関する身体障害者手帳をお持ちの方は、給付を受けられる場合があります。
給付を受けられる条件は自治体によって異なりますので、お住いの市町村役所の福祉窓口にお問い合せください。
無料貸出機があります 製品のお問い合せ先
ユアトーンの音質や使いやすさを体験していただくため、無料貸出機を用意。
お問い合わせ先
第一医科株式会社
〒113-0033 東京都文京区本郷2丁目27番16号
TEL 03‐3814-0111
FAX 03‐3814-0135
第一医科 製品情報 電気式人工喉頭 ユアトーン
今回引用掲載したカタログもダウンロードできます。
ユアトーン公式ホームページ
音声サンプルの動画もあります。
人工喉頭は、すぐに声を出せる人もいますが、多くの方は練習が必要です。
習熟には個人差が大きいので、言語聴覚士の指導を受けて練習して下さいね。
バリアフリー2018報告記事は他にも。
よろしければどうぞ。
介護ベッドの基礎知識も含めた誤嚥予防機能つきのベッドの情報、第1報はこちら。

ベッドで食事を自分で食べる方にオススメの介護用ベッドの情報、第2報はこちら。

お寿司も!おせちも!簡単、おいしいムース食の情報、第3報はこちら

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