言語聴覚士(ST)のツムジです。
知り合いの由美さんが、言語聴覚士への転職を迷っているそう。
個人的には、言語聴覚士に出会えてよかった、いい仕事だと思っています。
でも、言語聴覚士の実際を知ったうえで目指してほしいので、いいことだけじゃない本音を伝えるね。
由美さんは30代前半の介護職。
せっかく今まで介護の仕事をがんばってきたので、介護の経験を生かした転職ができたらいいなと思っています。
言語聴覚士の仕事は、介護の経験を生かした仕事なんでしょうか。
転職経験のある現役の言語聴覚士がわかりやすく伝えます。
言語聴覚士のイメージは嚥下の専門家?
由美さん、言語聴覚士を知ったきっかけは?
職場の特別養護老人ホームに非常勤のSTさんが月に1回来てて、それで知ったの。長年介護の仕事をしていたのに、正直それまでは言語聴覚士の存在を知らなかった、ごめんね。
言語聴覚士の知名度の低さはわかってから、気にしないで。STのイメージは今はどう?
STさんのイメージはね、
聴診器を首にぶらさげていて、食事中の利用者さんののどに当てる。
食堂でむせている人がいると、鋭い視線を送っている。
お茶のとろみの濃さを決めてくれる。
わあ、わかりやすい!そのSTさんは特養で嚥下の評価や指導をしているんだね。
そう。むせる方や、食事量が少なくて困っている利用者さんをみてくれて、食形態とか介助方法とかのアドバイスをくれる。介護スタッフは効率ばかり追い求めるから、それを軌道修正してもらっている感じかな。
へえ、STが介護のスタッフを巻き込まないといけないから、なかなかきびしそうね。
うん。STさん、苦労していると思う。
でも「嚥下の専門家」って感じでカッコいいなと見てるよ。
介護職の食事介助は怖い?
由美さん、特養だと、食事に介助が必要な方ってたくさんいるの?
多いよ。ワンフロアに常時4~5人はいる。自分で食べられない方は年々増えているね。90代、100代とか超高齢の方も普通になってきているのもあるのかな。
特養の食事の介助って、どんな感じ?
スタッフの数に限りがあって、居室にはりつくわけにはいかないから、寝たきりの方でもリクライニングの車いすに移乗して、食堂に集めて、そこで一気に介助する感じかな。
介助はどんな風にしているの?
1対3とか4とかで介助するのが普通。
えっ!1人で3人、4人を同時に介助するってこと?
そうそう。普通だよ。言い方はよくないけど、ひな鳥にえさをやっているみたいだなと思うときある。
噂では聞いていたけど、本当に何人も同時に介助するんだね。その状態では一人一人にあった方法で介助するなんて無理だ。介助していて、不安なこととか、怖いこととかない?
あるある。いっぱいある。むせる人が多くて、ああ、またむせさせてしまった、どうしよう、怖いなあと思う。
そうだよね。でも、プラスに考えると、むせることができるということは、誤嚥しかけたものを出そうとする力があるってことだから、いいことなんだよ。
そうかもしれないけど、やっぱり怖いよ。
うん、怖いよね。
高齢者が安全に食べることって、一般の方が考えているよりずっと難しいことだもの。飲み込みがうまくいかなかくて、誤嚥性肺炎を起こし、肺炎がもとで亡くなる人もいる。自分があげたひとさじが原因で、亡くなる場合だってあるかもしれない。
由美さんが怖いと感じるその経験は、今後に必ず役立つと思う。食べることを怖いと思うなんて、普通の方なら絶対経験してないことだからね。
その怖さを忘れちゃいけないてことだね。
そうそう。
食事介助は命にかかわる仕事だと胸に刻み込んでおいた方がいいね。
由美さん!私からすると実は介護の経験があるってすごくうらやましいんだよね。
介護の経験は言語聴覚士に生かせる?
えー?介護の経験がうらやましい?どんなところが?
だって介護ができるってことは利用者さんの生活全体を見られるってことじゃない?その視点をもっていて、生活全体をサポートする技術があるって、ものすごい強みだと思う!
そうかな…。介護職なら普通のことだけど。
私みたいに、訪問で利用者さんのお宅をまわっていると、「食べる」と「コミュニケーション」だけにアプローチするのでは不十分で、もっとその方の生活全体に関わりたいケースが出てくるんだよ。
うーん、例えば、どういうこと?
例えば、利用者さんが排泄動作(介護者から見るとトイレ介助)で困っていたとする。実際に排泄動作を知っていて、いろんな方のトイレ介助をした経験があれば、声のかけ方とか誘導の仕方とか、具体的なアドバイスがしやすいだろうなあと思う。
なるほど、言語聴覚士だけど、声のかけ方や誘導の仕方でトイレ動作が関係してくるってわけね。
うん。だから、由美さんみたいに介護の経験がある人は、ぜひ訪問の現場に入ってほしい、個人的には。
あっ、つい個人的感情が…。もちろん、病院・施設で働いても、介護経験はすごい武器になること間違いなしだよ。
そっか、ありがとう。ちょっと自信出たよ。
うん、自信をもって!!
まとめ
介護の経験が言語聴覚士の仕事に生かせるとは、想像していなかったから、なんか背中を押してもらった感じがするな。介護の経験が無駄じゃなかったって思うとうれしいわ。
由美さんは介護の仕事が決して嫌いなわけじゃないし、誇りをもっているんだと思う。だから言語聴覚士みたいな、介護の経験が生かせる仕事に転職できたら、メリットはすごく大きいと思うな。
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