機能的口腔ケアとは?口をきれいにする器質的口腔ケアとの違いとは?

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口腔ケア

STツムジです。訪問看護ステーションに勤務する言語聴覚士です。

最近、「機能的口腔ケア」ということばを耳にする機会が増えてきました。

「機能的口腔ケア」とはたんに口腔内をきれいにすることではなく、口腔機能を維持・向上させるためのアプローチのことです。

機能的口腔ケアの具体的な方法を紹介します。

 

口腔ケアの定義

狭義の「口腔ケア」とは歯みがきやうがいなどによって、口腔内を清潔に保つ行為、つまり口腔清掃です。
広義の「口腔ケア」は口腔機能を維持・向上させるためのアプローチまでを含みます。

器質的口腔ケアとは

器質的口腔ケアとはいわゆる「口腔清掃」のこと。

歯みがき・うがい・義歯を洗うなど。

介助者が口腔内をスポンジや口腔ケア用ウェットティッシュなどで拭くことも含まれます。

 

機能的口腔ケアとは

機能的口腔ケアとは口腔機能を維持・向上・回復させるためのアプローチを言います。

口腔リハビリテーションと言い換えることもできます。

具体的には

  1. 口唇・頬・舌等の自動運動
  2. 口唇・頬・舌・歯茎等のマッサージ
  3. リラクゼーション(脱感作)
  4. 咳嗽練習
  5. 呼吸・発声・構音練習

などが挙げられます。

 

器質的口腔ケア=口腔清掃

機能的口腔ケア=口腔機能を維持・向上させるためのアプローチ ですから

狭義の「口腔ケア」=器質的口腔ケア
広義の「口腔ケア」=器質的口腔ケア+機能的口腔ケア

とまとめることができますね。

 

機能的口腔ケアの方法

口唇・頬・舌等の自動運動

一般的な「口の体操」や「嚥下体操」のことです。

自動運動とは自分で行う運動という意味です。

  • 口唇の開閉(大きくゆっくり→細かく速く)
  • 口唇の突出と引き(ウ→イ)
  • 頬のふくらませとひっこめ(強く→ぶくぶくうがいのように細かく)
  • 舌の前後運動(口は開けたまま、舌だけ動かす)
  • 舌の左右運動(舌先を口角につける→口角を越えて頬を内側から押す)
  • 舌の上下運動(口は開けたまま舌の位置は固定して、舌先だけ動かす)

施設等では、食事前の準備体操として、されているところが多いですね。

 

リラクゼーション(脱感作)

高齢者、特に認知症の方にとっても、口のなかはとてもデリケートな部分です。

感覚が過敏になっている場合があり、急に触ると、驚かれ、抵抗されることがあります。

声をかけながら、身体の末端から、例えば、腕→肩→頬→口というように少しずつ口に近づいていきます。

触られることに慣れていくイメージですね。

口のなかに触られることを強く拒否される方には、毎日少しずつ触られることに慣れていただくようなつもりで関わりましょう

 

口唇・頬・舌・歯茎等のマッサージ

1の自動運動がご自分でできない方には、介護者がマッサージします。

介護者は、手袋をして、対象者の口唇を軽くつまんで伸ばしたり、頬を内側から拡げたり、舌を引き出したりします。

ぐいぐいマッサージするというより、可能な範囲でゆっくりとストレッチするようなイメージで触るとよいですね。

歯茎は運動ができませんので、優しくマッサージします。

歯茎をマッサージすることで、

  • 目を覚まさせる
  • 口のなかの感覚を高める
  • 風味を感じやすくする
  • 唾液が増える

効果が期待できます。

刺激がないと眠ってしまうような覚醒レベルの低い方には、リラクゼーションとマッサージしかできない場合が多いですね。

 

咳払い練習

ゆっくり息を吸って、「えへん」と意識的に咳払いをする練習です。

咳嗽(がいそう)練習とも言われますが、内容は同じです。

力を入れるのはのどではなく、おなか。

おなかをへこますように力を入れて行うイメージです。

 

口腔ケアの目的の大きな1つに誤嚥性肺炎の予防があります。

誤嚥のリスク=誤嚥性肺炎のリスクではない 誤嚥性肺炎予防の5つのポイント
STツムジ@介護分野です。 日々、利用者さんのお宅を訪問している言語聴覚士です。 言語聴覚士は「食べる」「話す」のリハビリテーションの専門家です。 最近、「誤嚥性肺炎」ということばを...

こちらにも書いているのですが、誤嚥物を喀出(吐き出す)する力を鍛えれば、誤嚥性肺炎のリスクを下げることができます。

ただし、咳をするときには声帯がぎゅっと閉じるので、やりすぎると声帯を痛める原因になります。1度に行うのは2~3回程度を目安としましょう

声を出さずに、ハッと強く息を吐き出す、ハッフィングも同様の目的です。

 

呼吸・発声・構音練習

呼吸練習の目的は肺活量を保つことです。

嚥下のすぐ後には呼気(吐く息)がきて、誤嚥しかけたものを排出し、誤嚥予防の働きがあります。

肺活量が低下した高齢者では呼吸回数が増加し、嚥下のタイミングがずれ、誤嚥しやすい傾向にあります。

誤嚥予防には、肺活量を保っておくことも重要です。

呼吸練習では、口をすぼめてゆっくりとした呼吸をしたり、深呼吸を行います。

 

発声練習とは、声を出す練習のこと。

高い声を出すことは、喉頭(のどぼとけ周囲)をより高く持ち上げるので、よりのどを鍛えることができます。

 

構音練習=発音練習のこと。

「ぱたか」「ぱたから」を反復します。

「ぱ」は口唇を、「た・ら」は舌の先を、「か」は舌の奥を動かして作る音。

「ぱたから」はまんべくなく、口唇や舌を使う音を含む、いい組み合わせです。

「ぱたから」の反復ができる方は、できる限り音を正確に保ちながら、速度を上げてみ

てください。

わざわざ声を出す機会を作らなくてもよいのです。

歌を歌ったり、お仲間とおしゃべりをしたり、笑ったり。

楽しい時間を過ごしながら声を出すのが、最も効率のよい練習になりますね。

 

まとめ

機能的口腔ケアとは、口腔機能を維持・向上させるために行うアプローチのこと。

  • 口唇・頬・舌等の自動運動
  • 口唇・頬・舌・歯茎等のマッサージ
  • リラクゼーション(脱感作)
  • 咳嗽練習
  • 呼吸・発声・構音練習

などがあります。

機能的口腔ケアと器質的口腔ケアと組み合わせて行い、効果的に誤嚥性肺炎を予防できるといいですね。

 

「機能的口腔ケア」は言語聴覚士が行う嚥下リハビリテーションの一種である「嚥下間接練習」と意味合いは近いと思うのですが、機能的口腔ケア=嚥下間接練習と言い切っていいものか、定義に違いがあるのか、私にもよくわかりません。

この辺りは引き続き、調べていきたいと思います。

 

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