きざみ食はかえって危険 「噛めない」のと「飲み込めない」のは違います

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嚥下障害

STツムジ@介護分野です。

訪問して、嚥下のリハビリテーションや助言を行っている言語聴覚士です。

 

施設などを訪問すると、きざみ食を食べている人の多さに驚くことがあります。

聞くと「嚥下がよくないから、きざみ食」と選択しているケースがあるようです。

 

きざみ食は、嚥下がよくない方にむいていません!

なぜむいていないか、その理由をわかりやすくお伝えします。

 

きざみ食は咀嚼を補う食形態

物を食べるとき、私たちは口のなかで咀嚼し、唾液と混ぜ合わせます。

舌で食べ物をひとかたまりにし、のどの奥に送り込みます。

そして、ごくんと飲み込みます。

 

きざみ食であるこということは、すでに食べ物が細かく刻まれているということ。

それは、口に入れた段階ですでによくよく咀嚼された状態であるということ。

 

本来、きざみ食は咀嚼を補うための食事なのです。

 

飲み込みがよくない方はきざみ食にしても飲み込みにくさは解決しません。

それどころか、きざみ食は1つ間違えると、かえって、嚥下しにくい食事になってしまいます。

 

みじん切りは咀嚼しにくいというデータ

おもしろいデータがあります。

きゅうりを「小口切り」「厚切り」「千切り」「みじん切り」の4つの形態で切った場合、一番咀嚼の回数が少ないのは、どの形態だと思いますか?

意外に思われるかもしれませんが、「厚切り」なのです。

食べ物は噛むことで唾液と混ざり合い、ひとかたまりの食塊を形成していくのですが、そのためには細か過ぎると逆効果になります。細かいものは噛みにくいのです。

おうちでできるえんげ食 コラムより

 

この結果、驚きませんでしたか?

 

食物は、ある程度大きさがある方が噛みやすいのです。

 

逆に、みじん切り(ごくきざみ食)は、咀嚼の回数も多くなるうえ、口のなかでばらばらになってひとかたまりになりにくいのです。

食べ物を口のなかで、ひとかたまりにまとまるのを助けているのが唾液です。

唾液が少ない高齢者は特にまとまりにくいのです。

 

みじん切り(ごくきざみ食)は口のなかや、のどの奥に残りやすくなり、入れ歯のすき間にも入り込むこともあります。

そして、残った食物が、ぽろりと気管に落ち込んだり、気管にひゅーっと吸い込まれたりして誤嚥につながるのです。

 

きざみ食を安全に食べる工夫

ごくきざみ食は嚥下食としておすすめできません。

 

むいている食形態というのは、個人差があるのですが、軟菜(舌でつぶせるくらいのやわらかさ)で一口大きざみ食と言われる食事の形態がかみやすく、かつ飲み込みやすい食事です。

柔らかさが均一で、大きさはおよそ8㎜~1㎝角程度と思っていいです。

 

一口大きざみ食を食べやすくする工夫としては、とろみをつける(=あんかけにする)方法がおすすめです。

先ほど、高齢者は唾液が少ないと言いました。

とろみは唾液の代わりに食べ物をまとめてくれる大事なつなぎの役割を果たします。

 

とろみでコーティングをすれば、送り込みしやすくなるということですね。

 

とろみについてはこちらく詳しく書いています。

むせる人になぜとろみ? 水分・おかず・お粥にとろみをつける理由とつけ方のポイント
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まとめ

みじん切り(ごくきざみ食)は嚥下食にむいていない。

かみやすい、飲み込みやすいのは、軟菜一口大きざみ食。

一口大きざみ食にあんをかけるとまとまりやすく、飲み込みやすい食事となる。

適切な食形態を選び、あんかけを使って、誤嚥を防ぎましょう!

 

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